覚醒なるか!?横浜・前田の立ち上がり
チーム創設5年目の横浜ビー・コルセアーズ。その中に「マエティー」の愛称でブースターから人気を集める選手がいる。初年度にアーリーエントリーで加入した前田陽介(188cm/82kg)だ。宮崎の強豪校である延岡学園高校から関東学院大学へ進学。大学時代には、1学年上のファイ・パプ・ムール(現bj新潟)とともに、インカレベスト4を経験した。しかし横浜入団後は、出場時間をつかむことができず、過去4シーズンの平均出場時間は8.4分(899分/106試合)とベンチを温めることが多かった。またシューターでありながら、3Pの平均試投数は1.4本(156本/106試合)と、物足りない結果が続いた。
そんな前田が今シーズン、スターターに抜擢された。外国籍選手の出場人数規定の変更や移籍でチームを離れた選手がいることが影響して巡ってきたチャンスだ。プレシーズンゲームを含めて、スタッツに現れる部分でなかなか結果が出てこなかったが、2勝3敗で迎えた10月17日の東京戦で、ようやく目に見える形で成果を出した。
第1Qに山田のアシストから3Pを決めると、第2Qにはゴール下へのカットインで得点を挙げた。東京に追い上げられた終盤には、ブザービーターとなる3Pを決めて、後半へ向けて良いムードを作った。その後もチームメイトがボールを回し、2本の外角を決め、昨シーズンまではほとんど見られなかったドライブからスコアメイク。キャリア最高得点タイとなる16得点(3P:4/7本、2P:2/4本)をマークした。
試合後、前田は「プレシーズンからずっと試合のときにシュートの調子が悪くて、なかなか(シュートを)決めることができず、それが何試合も続いていました。それでもチームのみんながボールを僕に回してくれていたので、やっと決めることができて、今、ホッとしています」と振り返った。平均出場時間が20分に及ぶなか、シュートを決めきれない苦しい状況をようやく乗り越えたのである。
また出場時間をもらえている今、試合に臨む意識の変化については、「僕の仕事はシュートをたくさん打って、決めることですが、そこに執着してしまうとディフェンスがおろそかになってしまうので、ディフェンスを意識しています。練習でビデオを撮っているのですけど、それを全部見て、もっと上手くならないといけないと思っています」とのこと。シューターとして、周囲からは期待されているが、自分の課題についてもしっかり見つめていた。
この日の活躍について、青木HCは「彼はこの夏に本当に危機感を持って、練習に取り組んでいたことをずっと見ていたので、今年はやってくれると信じていました。今まで試合で、オープン(な状況)で打っている本数もあったので、必ず彼なら入れてくると思っていました。この日が来るまで使い続けようと思っていたので。期待に応えてくれて素晴らしいです。これが自信につながれば、チームの武器がひとつ増えたことになると思います」と、前田の活躍を大きく評価した。
過去2シーズンの不甲斐ない結果を挽回するためにも、スターターとして蒲谷、山田に続く3人目の日本人の成長は急務だ。蒲谷やジョンソンといった得点源への厳しいマークにあったときの攻撃のオプションとして、また相手の外国籍選手や力のある選手とのマッチアップが今後も予想されるだけに、前田の成長は横浜の浮沈を左右する。
まずは今回の活躍がまぐれだったと言わせないためにも、次節10月24日、25日のアウェイ富山戦でしっかりと結果を出したいところだ。bjリーグラストイヤーを、「前田覚醒元年」と呼べるような活躍をチームもブースターは願っているに違いない。