3×3世界ランキングから見えることvol.3-1

成果とは裏腹に

 この疑問に対する答えとして、ひとつ考えられることがあります。例としては、2019シーズンのJAPAN TOUR EXTREMEです。このカテゴリーは 日本代表候補選手の強化、育成、発掘、選考を目的とした舞台(出場資格あり:強化指定選手orチーム4人のポイント合計が40万以上)且つ、Round.1~5はプロサーキットのJeddah Masters予選会の位置付けです。その為、大会グレードは「パープル」にマークされている国内で高いポイントを得られる舞台でもありました。

 ところが、下図のように12チームという募集定員に届かず、大会は軒並みグレードダウン… 

 単純計算ですが、これにより5大会で合計16万以上のポイントが得られなかったことになります。もちろんこのポイントが、そのままランキングに反映されるとは限りませんが、なかなかのダメージです。出場資格があるので、出場したくても叶わないチームがあるでしょうし、EXTREMEは見送ってOPENに出てChallengerの切符を狙ったチームもあるでしょう。ただそれを差し引いても、このレベルで12チームが埋まらないのは、ポジティブなことではないです(ちょっと寂しいかも)。いまの日本でこの土俵に乗れる選手たちはまだひと握りだと言うことを物語っています。

 ではなんでこうなるのか…を考えると2つあると思います。ひとつは取り組む方の目的が様々あるからではないかと。3×3は他競技に比べて始めやすいことが大きなメリットです。1チーム最低3人入れば大会へ出場できるし、抱える人数も少なければチーム運営のコストも抑えられます。世界No.1になることを掲げるチームがあれば、地域活性化をしたい、オリンピックに絡みたい、何か面白いことをする手段に3×3を選んだところもあるでしょう。また選手も3×3の世界レベルで勝つこと、オリンピック出場を目標にされる方もいれば、オフシーズンのスキルアップを考えている方、バスケが好きで強いメンツに挑みたいボーラーまで多岐に渡ります(この多様性が3×3の特徴であり良さ)。それ故に、「優勝すれば世界大会」や「高いポイントが獲れる大会」であっても、それが目的でなければ、そこに意識が向くこともないでしょうし、知っていても自分事としてピンと来ないのだろうと思います。

 もう一つは当たり前ですが、より上を目指す以上にはお金がかかる。EXTREMEは1大会につき1人5000円、OPENは1人3,000円の参加料が発生します。EXTREMEのRound.1~5に出た場合、1チーム4人×5,000円×5大会=100,000円が必要です。また選手との契約、遠征などに伴う経費、練習場の確保など、大会で結果を出すにはそれ相応の費用がかかるでしょう。一方で稼ぐのが大変な競技でもあります。3×3はスポーツビジネスで肝になると言われる「入場料(チケット)収入」がまだ期待できない。2019年からは風向きが変わり、FIBA(国際バスケットボール連盟)がW杯でチケット販売、PREMIERも同様に踏み切り、クラブレベルでも茨城のALBORADAが自前の大会で有料座席を設けました。が、今までトラフィックの多い場所で、観戦無料で見せることが3×3のスタンダードでしたので、これを根付かせるにはこれからでしょう。となると、収入の柱はスポンサーやグッズ販売によるところが大きいでしょう。ただTOKYO DIMEのような一部のチームではスクール運営もしており、安定した売上作りに向けた取り組みとしては見逃せません。

国内シーンの理想像?

 競技のすそ野が広がった今、いま考える理想はどんなものがあるのか? 立場によって変わってくるでしょうが、取材をしている身としては、プロサーキットを主戦場にした選手と、そうでない選手たちが切磋琢磨しながら、もっとシーン全体が底上げされて中身が濃くなること。その為にはチームもリーグも3×3で収益を上げて、また3×3に投資できるサイクルができたり、これらをサポートする仕組みや体制が整えられて、ひとつに繋がっていくことだと考えています。

 前者は昨シーズン、幸いにもTOKYO DIMEやUTSUNOMIYA BREX以外の選手たちがChallengerを経験したり、日本代表候補に名を連ねたBリーガーたちが増えてきました。彼らが世界を目指すべく3×3をより一層どっぷりやると、より面白い展開になるのでないかと想像しています。予定調和なのか、そのシナリオが崩れるのか、その攻防を2020シーズンは期待したい。後者は新型コロナウイルスの影響もあるので一筋縄ではいきませんが、3×3に関わる人たちが一枚岩になって取り組んでいきたいところです。単独でやるには限界があるかもしれませんから、コラボレーションなり、横同士の連携なり、何かの取り組み度合に応じて成果がシェアされたりができればいいのかなと。点で見ると良いなと思えることがあっても、それが点のままで、なかなか線にならず、面にならないような印象を受けるので、そこがガッチと繋がれば、3×3はもっと盛り上がる!

 次回は日本代表について考えて、一連のシリーズを締めたいと思います。

※一部、中止の大会あり