3×3世界ランキングから見えることvol.2

 vol.1の国別ランキングから一歩踏み込んで、男子の日本、モンゴル、中国の状況を見てみます。アジアのベスト3は最上位は中国(7位)、続いてモンゴル(9位)、日本(12位)となります。代表チームの実力で言えば、アジアカップで対戦するオーストラリアも特筆すべきところですが、3×3のランキングではオセアニア扱いで、世界ランキングも25位(812,272)ですので、ここでは割愛します。

世界200位圏内は各国のトップ選手たち

 では、その中身を紐解いていきます。下図は個人ランキング世界200位圏内の選手が各国でどの程度いて、国別ポイントにどのぐらいインパクトを与えているのかを表現したものです。目を引くのは、やっぱりモンゴルではないでしょうか。アジア2番手ですが、10名で国別ポイントの61%を稼ぎます。この背景にはUlaanbaatarというクラブの存在があります。2017年から本格的にプロサーキットへ参戦する彼らは、最新のチームランキングでは世界13位とアジア勢でトップを走り、昨年はスロベニアの強豪Piran(同7位)を破って、Challengerで初優勝も飾りました。

 またTaikharというチームも彼らに続いて、世界へ出る頻度が増えています。昨年、Huaian Challengerで日本のTeam Tsukubaに逆転勝ちしたのも記憶に新しいところです。加えてU-23年代の強化も感じられており、10名の平均年齢は26.4歳とバランスが良いです。例えば若手の代表格であるモンゴル4位のAnand Ariunbold(23歳)。彼は2018年にまだ日本で3×3をやっていました。上武大が日本選手権で、当時の3×3日本代表を兼ねたTEAM TOKYOを破った立役者の一人です。当時からナショナルチームに呼ばれていたと聞きますが、わずか2年で一気に飛躍した印象です。20台前半から30歳までの選手が世界トップレベルを日常的に経験しており、アジアで最も層の厚い国となっています。

 一方で、中国と日本は世界200位圏内の選手が国別ポイントに占める割合は45%前後でほぼ同じ。ただ中国のほうがプロサーキットであるレッド以上の大会に出た人数や頻度が多いため、獲得ポイントは上回ります。彼らはBeijingというクラブが軸となり、チームランキングこそ世界17位(800,997)で、日本のUtsunomiya(同18位/796,118)やTokyo(同21位/742,536)と実力的にも開きはそう感じませんが、外国籍選手をチームに入れていないことや、2019年は中国でMastersだけでなく、Challengerが多数開催されたこともあり、出場権を獲りやすい環境にあったと思われます(日本のChallenger開催は過去なし)。

 またモンゴル同様にU-23年代の強化も感じられ、7人中2人が昨年のU-23 W杯を経験。その一人である同国3位のPeng YanはセルビアのLimanでWorld Tourの舞台も踏んでいます(なぜこうなっているかは謎…)。また同国1位のYi Zheng(24歳)や2位のHaonan Li(20歳)も2018年のU-23W杯を戦い、現在はフル代表を務めています。3×3は経験が物を言う競技ではありますが、平均年齢23.9歳の中国が今後も継続的に海外転戦をしていくと、今後の伸びしろはとても大きいものがあります。

 それでは日本はと言うと、落合知也、小林大祐、齊藤洋介、鈴木慶太、小松昌弘の5人が2019年に過去最多のプロサーキットを戦ったことで、いまの国別ランキング12位があると言っていいでしょう。全員がレッド以上の大会に8度以上出た結果が、ポイントに反映されています。彼らの挑戦が無かったら、ポイントシステムの大改訂によって受けた影響はより大きかったと推測されます。6位の松脇圭史もTokyoでChallengerへ2度参戦しましたが、5位とのポイント差が物語る通り、まだまだトップレベルの経験は道半ばです。もちろんレッドに続くピンクの大会・ U-23 Nations Leagueには代表チームとして松脇、西野曜(日本7位)、富永啓生(同9位)、三谷桂司朗(同10位)など若手有望株が出場。2位になった大会もあり、西野に関してはBEEFMANや日本代表候補合宿でも研鑽を積んでいます。が、件の改定によって、ポイントが多ければ多いほど、よりレベルの高い3×3の大会で結果を残した証であることが鮮明になっていることを考えれば、「世界トップレベルの3×3はこうなんです」と体現できる選手層の薄さが“いま”の日本と言えるでしょう。

各国を支える選手層の違い

 そして選手層の薄さは、レッド以上のプロサーキットを主戦場にする選手だけではありません。下図は世界200位圏外の選手たちが国別ポイントに占める割合を示したものになります。国別ポイントは各国の上位50名の合計ポイントになりますので、それぞれの総合力が図れる指標と言っていいでしょう。いま日本がアジアで3番目である理由はここにもあります。

 これを見ると、中国がプロサーキットが主戦場でない選手たちによって、国別ポイントの57%を稼ぎだします。ポイントが30,000台の選手が18名と一番多いのですが、40,000~60,000台の選手がモンゴルや日本に比べて多い状況です。この背景に考えられることは2つ。ひとつは世界TOP200に入らない選手でもプロサーキットの参戦歴があること。さらには中国でプロサーキットが数多く開催されているため、それに繋がるSatelliteやQuestといった予選会が中国内で豊富にセットされていることも要因でしょう。あくまでも参考になりますが、3か国で50位の選手を比較すると、中国人の選手はパープルの大会に8度も出ています。日本で言うと、3×3.EXE PREMIERやJAPAN TOUR EXTREMEと言ったところでしょうか。

 対照的に日本は中国に比べて30,000以上のポイントを持つ選手が少なく、20,000台の選手もモンゴルの32人に対して19人。10,000台の選手も7人います。50位同士を比べると、出場する大会のグレードにバラツキが見られます。こういったことが、最終的にはランキングの差になって発現するひとつの原因と言えるでしょう。ちなみに、これは出場大会のグレードを比較しているので、「ポイントを持っていない=選手として実力が劣る」ということでは必ずしもありません。世界中どこもそうでしょうが、選手は出場する大会のグレードに問わず、目の前のゲームで勝つことを目指します。その場の熱量はどこにも負けないと思ってます。むしろ日本は世界でも3×3の普及にはいち早く取り組んできほうだと思いますので、積んできことは自信を持って良いでしょう。

 でも、なぜ差が出るのか?国内を見渡せば活動するチーム数も増え、参戦する選手のレベルは間違いなく上がってます。代表を頂点にグラスルーツまでどんな姿が日本の3×3にとって一番良いのか。正解は無いでしょうが、次回vol.3はそのあたりを考えてみます。

3×3 各種ランキングの仕組みを詳しく知りたい方はFIBA 公式サイトへ(英語/外部リンク)

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