再び有明を目指すビー・コルセアーズの今季の強み

2012-2013シーズンのbjリーグ制覇から一転、2013-2014シーズンはプレーオフ進出が叶わずに7位に終わった横浜ビー・コルセアーズ。再び有明を目指す今季、♯3蒲谷正之や♯13山田謙治といった日本人選手はほぼ全員が残り、ゴール下の要である♯50ウェイン・マーシャルと再契約を果たした。新加入選手として、信州から♯11齊藤洋介を獲得。外国籍選手については、琉球や浜松で優勝経験のあるセンター♯33ジャフロー・ラーカイ、得点力のある♯15ウォーレン・ナイルズを新たに加えた。

昨季、東地区1位の富山とのシーズン開幕戦では、新しい外国籍選手の合流で間もない状況でありながら、2戦目で貴重な勝ち星を挙げた。そして10月11日、12日に座間スカイアリーナに信州を迎えての本拠地開幕試合。初戦は信州に3Pを14本、成功率48%(14/29)と高確率で決められてしまい90-105で黒星を喫したが、翌日は第1 Qを9点に抑える堅守でリズムに乗ると、その後も攻守に付け入る隙を与えずに95-71で圧勝した。試合後、勝久マイケルHCも「今日は目指しているディフェンスを40分間通して堅実にやれた。また内外とバランスよく、シンプルかつアグレッシブにプレーできたことが素晴らしいと思う」。と語り、本拠地での白星に安堵の表情を浮かべていた。

今回、この勝ち星を挙げた2戦目を見て、今季の横浜の強みを3つ考えてみた。

(1)マーシャルの復活とラーカイとの相乗効果 身長211cm、体重120kgとリーグを代表するセンターであるウェイン・マーシャル。昨季は膝の怪我により出場時間の制限があるなど、決して万全の状態ではなかった。しかし11日の試合では、体も絞れており、インサイドでのステップワークもスムーズで、19得点8リバウンドとキレのあるプレーを見せていた。 またジャフロー・ラーカイとのコンビネーションも機能しており、2人のいる時間帯のインサイドは非常に脅威である。マーシャルがハイポスト、ラーカイがローポストの位置関係で、ハイロープレーが要所で決まっていた。またゴール下にこの2人がいることで相手の守備が収縮、Wチームで寄ってきたところをパスアウトから外角のシュートを決めるシーンもいくつか見られた。マーシャルが7アシスト、ラーカイが3アシストと2人でチーム全体22アシストの内、約45%を占めており、攻撃の起点にもなっている。ただ不安要素もある。横浜の外国籍選手は3人であり、チームで2mを越えている選手はこの2人だけであるため、ファウルトラブルは気を付けたいところである。また試合数を重ねるほど疲労も蓄積されるので、怪我のあったマーシャルやベテランの域に入るラーカイのコンディションも気になるところである。まずは健康面を維持しつつ、ペイントエリアでの両外国籍選手の活躍を期待したい。

(2)プレーメーカーへの期待がふくらむナイルズ リーグ制覇をしたシーズンの中心選手であったドゥレイロン・バーンズ。独特のリズムのドライブや、勝負所で決めるジャンプシュートなど、試合の勝敗に影響を及ぼす選手であった。昨季の最終戦後に勝久HCは修正点の1つとして「プレーメーカーの獲得」をあげており、蒲谷や山田にかかる負担をいかに減らせるかが、課題の1つであった。今季、開幕の直前で合流したウォーレン・ナイルズ。これまでの4試合で1試合平均21得点、その活躍ぶりからバーンズの再来かと期待してしまうぐらいに楽しみ選手である。身長194cmと決して大きくはないが、シュートレンジは広く、ドライブもそのまま突っ込む場合もあれば、フローターショットを決めるなど、引き出しが多い。日本でのプレーは初めてであり、チーム内のコミュニケーションが気になるところだが、「確かに日本語が話せないのは難しいけど、バスケはジェスチャーなどで分かりあえるので、そこまで問題ない」。と話しており、まずひと安心である。また初めての本拠地での試合を終えて、「非常に会場の雰囲気は好きです。ブースターも熱狂的でプレーがやりやすい」。と横浜のブースターの印象を語ってくれた。口数が多い選手ではなく、シャイな雰囲気であったが、ブースターに注目して欲しいプレーは何かとの質問には、「ハードにプレーする姿。勝利に貢献する姿を見て欲しい」。とすぐさま答えてくれた。ブースターの声援により、この選手が横浜で成長することで、プレーオフが近づきそうである。

(3)齊藤洋介の活躍がもたらすもの 今季、唯一の日本人加入選手である齊藤洋介。この日は21分の出場で13得点(3Pが1本、2Pが3本、フリースローが4本)を挙げる活躍を見せた。放ったシュートは全て決めるなど、蒲谷と並んで日本人選手トップの得点を挙げており、チームで存在感を見せつつある。本人も「どう思われているかわかりませんが」と前置きしたうえで、「徐々に戦術理解をして、どういうプレーが好ましいのか、好ましくないのか。こればかりは試合に出てみないとわからないことなので、この4試合出させてもらっているぶん、経験値として溜まっているので次に来る試合に活かしたい」と話している。また自分の役割についても「蒲谷選手と山田選手の2枚看板に、しっかりとくい込んでいきたいと思います。またそう出来るようにしっかりと準備をしているし、そうならないといけない」。と語ってくれた。初めての移籍であるが、地元でのプレーということもあり、第3の日本人選手へ成長することの意気込みがうかがえる。もちろん齊藤の加入により、♯32前田陽介や♯73久山智志、♯7堀川竜一はポジションが近いこともあり、これまでに無い競争を強いられることになる。特に前田において同じ3Pを武器とする選手同士であり、負けられないことであろう。この齊藤の存在が日本人選手の底上げにつながることを期待したい。

長いシーズンを戦いぬき、2年ぶりのプレーオフ、そして有明進出を果たすには、昨季からの力に新戦力の融合が必要不可欠である。全52試合+プレーオフを勝ち上がるには、スタートの5人だけでなく、ベンチメンバーも含めた総力戦となる。リーグ制覇から7位へ沈むアップダウンの激しい過去から決別し、新しい横浜ビー・コルセアーズを作ることができれば、歓喜の瞬間がまた訪れてきそうだ。