B1・B2全ユニフォームサプライヤー調査 2020-21シーズン

ついにBリーグの2020-21シーズンがはじまりました。今季で5シーズン目です。コロナ禍というイレギュラーな状況ではありますが、「バスケットボール」のポテンシャルに期待して、ユニフォームサプライヤーが久しぶりに動きを見せてます。ではどんな状況か、確認していきましょう。

Bリーグの1部と2部を合わせると36チームありますが、そのうち10チームが今シーズンよりサプライヤーを切り替えています。詳細は後述しますが、それぞれ5チームずつ。特に1部は昨シーズンへ入るタイミングでは、わずか1チームしか交代がなく、Bリーグ開幕時(2016-17)の7チーム交代に次ぐ、規模になります(※1)。

では、具体的にB1の顔ぶれから見ていきましょう。オレンジで色付けしたところがNEWサプライヤーになります。まず注目は岡山県で創業したEGOZARU(三祈)です。北海道と島根のサポートをはじめました。前者と言えばMIZUNO、後者と言えばIN THE PAINT(ヤング商事)が長年にわたる取り組みをしていただけに、ついに交代したか!という印象です。

また名古屋Dも30年続いたasicsから、地元企業の代表格・スポーツ量販店のアルペンが展開するTIGORAに切り替えました。正直、これは完全にノーマークでした(笑)ショッピンモールでよく見かけるライフスタイルブランドというイメージだったので、競技アパレルに取り組むことに驚きました。とは言え、アルペンは「kissmark」のような自社ブランドを展開する商品開発力を古くから持っています。またチームオーダーまで取り組むのであれば、コロナ禍でどこまで活用できるかは不透明ですが、スポーツDEPOというリアル店舗を起点にすることもできるのではないでしょうか。

秋田はUNDER ARMOUR(ドーム)からFILA(伊藤忠商事/ダイワボウアドバンス)になりました。FILAは言えば、元NBAのスター選手であるグラント・ヒルのシグネチャーシューズがよく知られたところ。年代によってはクラッシクブランドですが、最近では10代~20代にシフトして売り上げを伸ばしています(※2)。Bリーグが他競技に比べて観戦者層が若いことや、普段着として着回しできるようなアパレルを開発できれば、バスケで再び存在感を発揮することもできるでしょう。

広島はB1昇格を機に、CHAMPION(ヘインズブランズ ジャパン)になりました。このブランドと個人契約をしている田渡凌も同チームへ移籍しており、チームと彼の両輪で露出することが狙えそうです。

次はB2です。ここは昨シーズンから観測をはじめて、交代は再び5チーム(※3)。緑で色付けしたところです。その顔ぶれは国内の大手や中小、複数のブランドをかかえる企業から、競技特化している企業まで、群雄割拠の様相を呈しています。

注目は福島のUNDER ARMOURですね。なぜUNDER ARMOURがついたのか経緯は分かりませんが、彼らがかつて震災のあったB2熊本をサポートしていること、そして福島も震災から2021年で10年が経過することを考えると、改めてゆかりのある土地で活動しているチームを支える方針になったのではないでしょうか(あくまでも推測です)。同社を率いる安田秀一氏は著書『スポーツ立国論(東洋経済)』で、震災をきっかけに福島県いわき市でのスポーツを中心とした街づくりを志したことに触れてします。現に物流倉庫の建設、サッカー・いわきFCの設立、「日本のフィジカルスタンダードを変える」を掲げたチーム作りと、それを実現するトレーニング施設の完備など、同地で惜しみなくスポーツに投資をしています。バスケの福島もこういったUNDER ARMOURのノウハウが活用できれば、B2で面白い存在になるのではないかと期待しています。

hummel(エスエスケイ)、SPALDING、BFIVE(フラスコ)は複数チームをサポート。PENALTY(ウインスポーツ)はサッカー専門でしたが、東京エクセレンスにここ数年、供給してだいぶバスケのイメージがついてきた感があります。

なお、珍しい取り組みもココで触れておきます。仙台はプラクティス、トレーニングウェアについてはTRESにオーダーしています(※4)。デザインもシンプルでカッコイイ!3×3やストリートでお馴染みのKCがディレクターを務めるブランドで、彼自身も仙台出身。オーナーのデービッド・ホルトン氏も自身のSNSで積極的に発信しており、チームとブランド双方でガッツリ取り組んでいる印象を与えます。

サプライヤー交代の話題を取り上げた一方で、長年サポートを続ける方々も紹介していきます。ひとまずBリーグ初年度からとしました。9チームが同じです。ほぼ実力と比例していますね。Bリーグ制覇、あるいは制覇の可能性があるチームをサプライヤーとしても組みたいでしょうし、離したくないでしょう。またUNDER ARMOURで言えば、ユニフォームやウェアに留まらない包括的な取り組みをしているケースもあるので、チームとしてもメリットがあります。

またTIP OFF(フープスターサカイ)は新潟のお隣・福井県に工場があり、IN THE PAINTは関西圏に強いブランドでbjリーグ時代から続く、滋賀との結びつきは深いです。またココが該当するか分かりませんが、大手や外資より内資で中小のほうが小回りが聞きやすいと聞きます。柔軟にサポートしてくれるのではないでしょうか。

さて、コレで最後になります。サプライヤー別のサポートチーム数(2チーム以上)です。ご覧の通り、UNDER ARMOURが6チームと最多になります。ただ彼らはコロナ禍以降、直営店の相次ぐ閉鎖やプロテインやサプリメントのブランド・DNSの事業売却を進めました。事業のスリム化と経営資源をUNDER ARMOURに集める動きをしています(※5)。また5人制男子日本代表のサプライヤーでもありましたが、8月のSHOW CASEで出場した選手たちの胸に彼らのロゴはありませんでした。ここ3期は減収が続き、2019年12月期は当期純利益でマイナス。コロナ禍によるさらなる事業悪化も懸念されます。それでもバスケ界で2リーグ対立という混沌の時期から、彼らの男子バスケを支えてきたブランドであるだけに、この苦境から脱して欲しいところでもあります。

またEGOZARUも全国の主要地域をカバーできように各チームと結びつきを作りました。もちろん地元のトライフープ岡山も彼らがサポートしています。東京にいると同ブランドの広がりは、正直言うと感じることはないのですが、関東近郊や地方ではじわじわと浸透しているのでしょう。

以上が今シーズンのB1とB2の全サプライヤーになります。ただ各社にとって、チームへサプライすることは、マーケティング活動の一環です。ここで投資分をペイできるところは、少ないでしょう。国内トップチームを支えることができる製品力、信用性を訴求して、ブランドを広める。それを一般競技者やカジュアルラインの販売に繋げたり、チームオーダー獲得の後ろ盾にしていきます。またチームも最大限、そのサポートに見合うことする必要もあるでしょう。

コロナ禍で厳しい市況が推察されるものの、「サプライヤー」が「バスケットボール」を支える存在であり、また「バスケットボール」が「サプライヤー」を支える存在にもなって、今シーズンを楽しませ、盛り上げて欲しいところです。

<参考>

※1.2016-2017シーズン B.LEAGUE 元年をサポートするサプライヤーたち

※2.FILAが10代に大ウケ!「懐かしブランド」再ブレイクの裏側-ダイヤモンドオンライン(外部リンク)

※3.2019-2020シーズン Bリーグ36チーム、ユニフォームサプライヤーの動向

※4.「TRES BASKETBALL」とのオフィシャルサプライヤー契約締結のお知らせ-仙台89RES(外部リンク)

※5.アンダーアーマー日本総代理店のドームDNSを売却、売却は再建の一歩となるか-BEHIND THE FITNESS(外部リンク)