ドアマットチームから脱却を目指す埼玉ブロンコス

10年目を迎えたbjリーグ。初年度のチーム数はたった6チームであったが、順調に拡大を続けていき、今年は22チームとなった。各チーム、リーグ優勝を目指してスタートを切ったが、まずそれを達成する為の第1関門としてプレーオフ進出がハードルとなる。

リーグ創設初年度から参入している埼玉ブロンコス。オリジナル6(※1)として過去9シーズンにわたり戦い続けているが、いまだにプレーオフ進出が果たせていない。毎シーズン、下位に低迷を続けている、いわば「ドアマットチーム」である。

今シーズン、埼玉の指揮をとるのは下地一明。2010-2011シーズン途中に富山グラウジーズのヘッドコーチに就任すると、最下位の常連だったチームを変えた手腕を持つ。翌シーズンには勝ち星を重ねて、地力でプレーオフ進出を果たす。その後は自身の健康面の問題により退任したが、現在では東地区の首位争いをするまでに変貌した富山のベースを作ったと言っても過言ではない。

そんな指揮官は2年ぶりの復帰で、再び弱小チームの改革を目指す。シーズン初戦となった東京サンレーヴス戦のあとには、「正直弱いチームです。だけどスキルや気持ちの無いチームの立て直しには、やりがいがある」。と語っている。負け癖がついているチームだけに、その道のりは険しいことが予想されるが、改革への1歩を踏み出した。

10/18には強豪富山を本拠地に迎えた。第4 Qまで競った展開に持ち込むもファウルトラブルで高さを失い、終盤の追い上げも、勝負所で速攻を失敗して敗れた。試合後には、「変えたい思いは強いです。ただやっぱりコートに入っている選手が変わらないと試合には勝てません」。と、自分の思いと選手の状況にギャップを感じる一方で、「今週よりシステムを変えた。少し功を奏したかわからないが、少し良い方向に向かっている。明日も続けていけば、良いチームになるのではないか」。と僅かな手応えも得ている。「富山の1年目もそうだったけど、今は楽しいけど、しんどいです。勝ちと成長を一緒に同時進歩させるのは難しい」。と話す指揮官は、苦労や我慢を重ねながらシーズンを戦っていくことだろう。

今後、チームの浮上には選手全員のメンタルやスキルアップが必要不可欠であるが、その中でも一番期待したい選手は、♯23佐々木優希(昨シーズンまで姓は信平)である。能代工業から法政大学を経て、2011-2012シーズンに秋田ノーザンハピネッツへ入団してプロのキャリアをスタート。翌シーズンから埼玉に移籍して、3季目を迎える。190cm・85kgのサイズを持ち、3Pまで打てるシュートレンジやドライブ、走力など日本人フォワードとしての高い能力を持つ。

しかし勝負所で力が発揮できないのか、この敗れた18日の富山戦でも、第4 Q残り2分を切った場面で、スティールから速攻へつなげるが、♯68永田晃司へのパスを失敗して逆転のチャンスを潰した。下地HCも「今日は佐々木が明らかに躊躇していた。でも後半はやってくれた。ただ最後でまた出てしまった」。と会見でまっさきに名前を挙げていた。現在、埼玉のメンバーで指揮官が「よくやってくれている」と評価をしている選手は、♯68永田、♯15桝本純也、♯20ゲイリー・ジョンソンの3選手。そしてはっきりと口にはしなかったが、佐々木について桝本を引き合いに出し、「佐々木は(強く)言われると下を向く。でも桝本は下を向かずにまっすぐと(私の)目を見てくる。この違いです。佐々木にはこれに気が付いて欲しい」。と試合のミスを指摘するものの、彼への発奮を期待していることがうかがえた。能力の高い選手だけに、今後は精神的に強く変わることができれば、チームの向上に結び付きそうである。

もっとも現在(10/26時点)の戦績は8戦8敗で、早くも東地区の最下位。26日の仙台戦では103-50と53点差をつけられる大敗を喫した。「埼玉ブロンコスの選手はプロではない(下地HC)」と言われ続ける中、次週こそは選手が意地を見せて、今季初白星をもぎ取って欲しい。

※1 オリジナル6 … 仙台89ers 新潟アルビレックスBB 東京アパッチ(2011年休止) 埼玉ブロンコス 大阪エヴェッサ 大分ヒートデビルズ