3×3の強豪が参戦、ALBORADA CUPから考えるクラブが大会をオーガナイズする目的

 3×3の国内トップチームであるTEAM TOKYOを筆頭に13チームが、去る2月3日に茨城県つくば市で開催されたALBORADA CUP #4に集結した。コートサイドにはSOMECITYやALLDAY、3×3 JAPAN TOURなどバスケの現場で知らない人はいない、MC MAMUSHIとDJ MIKOがそろい踏み。いつもはのんびりとしていそうな街の郊外にあるフツーの体育館で、そのたたずまいとアンマッチにコート上でバチバチなゲームが展開され、駆けつけた観客を大いに盛り上げた。

KALIDE OKAYAMA 長谷川聖、高崎陽平、菊池亨、早瀬敏高(写真左から)

 決勝ではKALIDE OKAYAMAがTEAM TSUKUBAを破って優勝を飾った。彼らは昨秋、NIKEが仕掛けた3×3ゲーム・BATTLE FORCEを制したチーム。2019シーズンに日本No.1を狙うチームは、この大会を「なかなかこれだけのチームが集まってやれることはない。僕らはオリピックを目指している以上、日本国内で切磋琢磨しないといけない。TEAM TOKYOが出てきてくれたとかそういう意味で、こういう場所はとてもありがたいです」(菊池亨)と振り返った。

 この1dayトーナメントをオーガナイズしたのは、同市を拠点に育成に力を入れるクラブチーム・アルボラーダ。チーム名は、”夜明け” を意味するスペイン語で、日本のバスケットボールに変革をもたらす、という意志を込めている。2016年から3×3.EXE PREMIERに参入し、クラブの生え抜き選手を軸に、年々地力をつけてきた。代表を務める中祖 嘉人氏は、3×3日本代表チームのコーチングスタッフにも入っており、この競技の“強化”と“普及”を365日考えていると言っても過言ではないほど。本当にアツい方である。

 4回目を迎えた大会であるが、同氏によるとその目的は、「3×3のモデルケース作り」だと言う。そのために、今回はレベルの高いエリートゲームをセット。「K-TA(鈴木慶太/ TEAM TOKYO)やKIKU(菊池亨/KAKIDE OKAYAMA)に力を貸してもらいました。これが仙台の前哨戦(3×3.EXE TOURNAMENT JAPAN FINAL 3/16-3/17)。出場権利を取ったチームは、その予選にもう出ていけないルールがあるので、みんなに“試合をしたいでしょ”という話で集めました」と明かす。ローカルゲームで、ハイレベルなゲームができることは選手にっても参戦する意義は大きく、見に来た学生たちにとっては、刺激にも学びにもなる。

 さらに普及の観点から言えば、これをU-18、U-15、U-12というように世代を広げていくことを考えているという。「子どもたちのすそのを広げて、みんなが3×3を楽しめる社会を作りたいんです」と語る。年々、U-18の3×3日本選手権は出場チーム数が増え、3×3部を立ち上げる高校が出始めたるなど、アンダーカテゴリーも隆盛の兆しを見せるが、プレー環境が圧倒的に少ないことは大きな課題。育成年代に力を入れるクラブだからこそ、ここに着目していまから解決策を模索することは、将来的な競技の発展に寄与していくことだろう。

 その一方で、「たぶんビジネスモデルができておらず、まだみんなが苦しんでいる。その中の一つのトライとしてやれれば」と、中祖氏は事業の観点からも大会を行い、3×3で収益を生む方法を探そうとしている。

 この大会の大きな特徴として、3×3でありながら有料試合であること。中学生以下は無料であるが、前売り券は1,000円(税込)で、200席限定。当日券は1,500円(税込)が設定されていたが、それを待たずして完売した。チケッティングをやったゲームは過去に記憶がなく、目新しい取り組みと言っていいだろう。同氏曰く、「(チケット販売が)いいか、いけないかでいうと、FIBA(国際バスケットボール連盟)が関わってくると、たぶんダメと言われると思います。だけど、やっていかないと生活できない。選手に給料が入っていく仕組みを最終的には作っていかないといけないと思っています」と話す。

 現状、3×3が日本で最も盛り上がる時期は、Bリーグのオフシーズン。期間も短かければ、大会の観戦料金は無料だ。見に行くハードルは圧倒的に低いが、クラブとしては選手を保有して運営する以上は資金が必要である。3×3.EXE PREMIERはリーグと選手が契約を締結するため出場給の負担はクラブにない(インセンティブや移動費は負担あり)と言われているが、クラブが年間さらには中長期的な活動をするためには、3×3で稼げることを目指すのは当然のことである。「選手にお金が回る流れを作らないと、プロスポーツとして成り立たないでしょう。そのやり方がどういうやり方なのかを、みんながいま模索しながらやっている段階で、それの一つモデルケースとしてやっていきたい」と話す。この実験的なアプローチはまだ始まったばかり。積み重ねていき、トライ&エラーを繰り返すことで、よりよい競技環境が整っていく。

TEAM TOKYO 鈴木慶太

東京五輪に向かって突き進む3×3。男女の日本代表は、JBA(日本バスケットボール協会)の下、FIBAランキングで国内上位選手に加えて、トップリーガーや学生の有望選手を召集してオールジャパンの体制が構築されている。非常に明るいニュースであり、魅力ある日本代表は、競技が発展する起爆剤にもなる。だが、オリンピックはあくまでもきっかけ。それを見た選手や子どもたちが、憧れを抱き、プレーできる舞台や機会が受け皿としてなくてはならない。どのスポーツもそうであるが、「強化」と「普及」がそろってこそ、継続的な成長が続き、それはやがて「文化」と呼ばれることころまで昇華される。アルボラーダが取り組む大会のように、地域レベルでのゲームは大分や鹿児島を中心に九州でも行われており、今後は他のエリアでも創設がプランされていると聞く。2020年も大事だが、それ以降のことを見すえれば、いまからこのようなすそ野が広がることはとてもにポジティブだ。両輪が回り、3×3がドライブされていくことを今年はより一層期待したい。

写真提供 ALBORADA、miya_basket