世界の3×3シーンを振り返るin2019

東京オリンピックを来年に控えた3×3の2019シーズンは、例年以上にシーンをにぎわす出来事が目白押しでした。今回そんな世界の3×3を5つのトピックスに厳選して振り返ります。勢力図を塗替える攻防があったり、新たな大会が仕掛けられた一方で、王者の強さを改めて見せつけられたこともありました。

Photo by FIBA.com

W杯をUSAが初制覇

6月のFIBA 3×3 World Cupで男子のアメリカ代表が初めて優勝を飾りました(女子の中国も初V)。6度目のW杯にしてバスケットボールの母国が表彰台に立つ姿は、新たな歴史が作られたことを強く印象づけます。さらに、そこへ至る過程も7戦全勝と見事。予選の第1戦で世界No.1のセルビア撃破を皮切りに、過去2大会連続で決勝へ進出したオランダ、準々決勝でスロベニア、準決勝でポーランド、決勝でラトビアと、プロサーキット経験者を擁する欧州の強豪国を次々と倒しました。

もちろん、彼らも4人中3人がPrincetonとしてWorld Tourで経験を積んできたメンツであり、現役のNBA選手やGリーガーではありません。ベースとなる選手たちが、転戦を重ねてチーム力を高めることで、結果に結びつけました。現在の男子3×3においては、やはり誰が見ても、世界を相手に3×3を“積んできた”という表現が当てはまるチームが最も国際大会でメダル獲得に相応しいチームになり得るのでしょう。

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女子の国際大会が新たにスタート

5月よりFIBA 3×3 Women’s Seriesがスタートしました。これは各国のナショナルチームによるツアー大会で、世界15都市で開催。日本でも9月に3×3女子日本代表でサポートコーチを務める大神雄子氏 (トヨタ自動車アンテロープス)も、大会を誘致しました。初代女王にはフランスが輝き、MVPには同国から世界ランク2位(12/30時点)のMigna Touréが選ばれました。

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Migna Touré (写真一番右)

まだまだ競技環境が発展途上の中、これだけの規模でグレードもW杯やEurope Cupと同格のブラウン(10段階中7番目に高い)が設定された大会は、競技力の向上や各国の強化の場、さらにはポイント獲得の意味合いにおいて価値の大きい取り組みです。将来的には男子のMastersのように、クラブチームにも出場機会が開かれると、各国で競技レベルのボトムアップや、大会のグレードアップ、選手のモチベーションをたきつける効果をもたらすのではないでしょうか。

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東京大会はオーストラリアが優勝

混戦模様のプロサーキット

今シーズンはプロサーキットの最高峰、FIBA 3×3 World Tour Mastersのレギュラーシーズン11大会で優勝チームがじつに8チームも生まれました。昨シーズンは9大会で優勝チームはわずか3チームであり、各チームの実力が接近した激戦の1年だったと言えます。とりわけ、アメリカの台頭は著しく、W杯で優勝を飾ったUSAの主力を擁するPrincetonは地元開催のLos Angeles Mastersを制して、世界のTOP12が集まるUtsunomiya Finalでは準優勝しました。さらにNY HarlemもLausanne Mstersで1位となり、Utsunomiya Finalでもベスト4に進出。その原動力となったDominique Jones(178㎝)はMastersのレギュラーラウンドMVPにも選出されています。

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Dominique Jones(写真中央)

またリトアニアのŠakiaiもプロサーキット初参戦で、Montreal Mastersを獲り、Utsunomiya Finalではベスト8に食い込みました。彼らは同国の5人制リーグ2部所属クラブのチームメイトという間柄で、海外の他のチームを見回しても、なかなか無い珍しい背景を持っています。真似をすることは難しいかもしれませんが、所属先のサポートや理解があれば、5on5と3×3の両立によって世界で結果を残すことができる良い証明になったことを感じさせてくれます。

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やっぱりあなたたちが王者

先ほど「混戦模様」と書きました。が、Utsunomiya FinalというWorld Tourで最もレベルが高い大会においては、そうはならなかったのです。それは昨シーズンの覇者・Novi Sad(セルビア)が2度目の連覇、通算4度目のチャンピオンになったから。2018年はMastersとFinalを合わせて32戦無敗というとてつもない大記録を打ち立てましたが、2019年のレギュラーシーズンで優勝は出場8大会中で2度のみ。絶対的な強さは影を潜めて、今回のFinalでも予選で黒星&薄氷の勝利と苦戦していました。

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しかし、負けたら終わりの決勝トーナメントからその姿は一変。今季ブレイクしたŠakiaiに快勝し、今季のMastersで最多となる3度の優勝を誇ったRigaに競り勝ち、決勝では前日に負けたPrincetonに雪辱。地力の差を見せつけました。これで、彼らが宇都宮でチャンピオンボードを掲げる姿は、Mastersに出場した2016年、2017年に続いて3度目。最強王者はその強さを改めて証明するとともに、TOKYOへ帰ってくる来夏の姿にも大いなる期待を抱かせてくれました。

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Final MVPの Tamás Ivosev(写真一番右)

TOKYOへ男女各4か国の出場が決定

11月2日に東京オリンピックへの出場国枠、男女各8か国のうち、4か国が発表されました。既報の通り男子はセルビア、ロシア、中国、日本。女子はロシア、中国、モンゴル、ルーマニアとなりました。この結果は11月1日時点の世界ランキングで上位4か国に入ったことに基づいたもので、日本については開催国枠として男女どちらかに切符が与えられる条件の下、男子が選出されまた。

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一方で、プロサーキットやW杯、 Women’s Seriesなどの国際大会で上位進出チームを輩出している国、例えば男子はアメリカやオランダ、スロベニア、女子で言えば世界ランクでベスト3を独占するフランスや、W杯で表彰台にのぼったハンガリーやイタリアは、このタイミングでTOKYO行きを決められていません。これには、国別ランキングはその国の上位100名のポイントの合計値で決まる仕組みが背景にあります。FIBAのルールを理解したうえで、当事者たちが一丸となって大会の制度設計して、さらにはそこへ出場チームを確実にそろえてやりきったかどうか。これが、その命運を左右したのではないでしょうか。今後に続く、来年3月と5月にある熾烈な最終予選からも引き続き目が離せません。

最終予選の情報はFIBA公式サイトへ(外部ページ)